memory+ position paper 萩野純一郎 (Jun-ichiro itojun Hagino) itojun@ipv6samurais.com 本日のテーマ、「テクノロジーによる記憶の拡張は可能か?」についていくつかの側面に分けて述べる。 記憶の拡張 記憶の拡張については、やはりgoogleやwikipediaによる検索を使って「知識の量を増やす」ということが挙げられるであろう。googleなどのサーチエンジンはインターネット上の情報をかき集めて検索してくれるので、インターネット上にある情報資源を網羅的に検索できることができるが、その分品質は不明である。wikipediaはボランティアによる百科事典だが、googleよりは品質はよいものの内容がボランティアによって説明されたものに限られる。 SF作品では士郎正宗の"Appleseed"で、主役のブリアレオスが「ヘカトンケイレス」として大脳以外の脳を接続している。また、「攻殻機動隊」ではネットワークで接続された計算機と大脳の融合が描かれており興味深い。 出力の拡張 大脳で考えても、それが出力できなければ意味がない。例えば「文字を書く」「身振り手振り」「絵を描く」「発話する」「表情を出す」などの外部表現があるだろう。 コンピュータによる大脳出力の拡張として最近登場したのがblog、YouTube、それから2ちゃんねるであろう。blogは単なる日記ではあるが、検索エンジンとの組み合わせやトラックバックなどのメカニズムにより、新しいコミュニケーション手段としての立場を確立しつつある(ただし、インターネットでみつかるのがblogばかりというのは日本だけらしい)。YouTubeはご存知のとおり、個人が10分ビデオで世界にあらゆるヘンなことを発信するための道具である。2ちゃんねるを「巨大な文学装置」と評されている方もいる。 入力の拡張 入力の拡張も近年いろいろと多い。サーチエンジンなどを「入力」とすることもできよう。もっと直接的な入力装置としては携帯電話やPDA、その極北としてSteve Mann教授から始まるwearable computingの流れがあるだろう。wearableは「着る負担」があるので、嫌な場合にはubiquitous方面に行くか、またはロボットを連れて歩くということもできるだろう。 まとめると 以上の技術をまとめると、1990年代前半にUS国家予算までつきかけた"lifelog"の方向性が正しいのではないかと考える。自分のまわりに起きる事象はすべて記録し検索可能にしておく。このために必要な技術開発はいくつかあるが、(1) wearableまたはなんらかの方法で記録するための枠組み、(2) 無限の2次記憶装置、(3) さまざまな検索やタグづけ技術、があるだろう。 おまけ 世界SF大会が初めてアジアで開催されます。8/30-9/3、パシフィコ横浜です。現実世界とSFは相互に影響しあっていますので是非。 http://www.nippon2007.org/